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こんな方にインタビュー
聞き手
そらもね代表 村田 真弥子 |
伊藤恵美著
株式会社埼玉種畜牧場
「心友の像」前にて
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ペットとしても人気のミニブタについて、『だいすきミニブタ!』の著書である伊藤恵美(現在・菊池恵美)さんにお聞きしました。
東京農業大学農学部畜産学科卒、(株)埼玉種畜牧場・企画室勤務。 |
今年は亥年ですが、猪の仲間である豚がペットとして飼われるようになったのはいつごろですか? |
家という字は家の中に豚がいる形ですから、それこそ新石器時代から人間にとって身近な存在だったということになります。日本でいう猪は中国・韓国ではブタの意味ですから十二支にも入っています。
世界でペットとして飼われるようになったのは1960年代になってからですが、日本では20年くらいしか経っていません。ベトナム原産の「ポットベリーピッグ」がカナダに持ち込まれ、アメリカなどで改良されたものが入ってきて、日本ではこの「ポットベリーピッグ」が主流になっています。ポットベリー(太鼓腹)というようにお腹が特徴でかわいらしく、飼いやすいので好まれるようです。 |
大学ではどんな勉強をされたんですか? |
主に臨床観察。最初の動物は成長が悪く内臓系の病気をもっているミニブタで、正常に繁殖できるまでの実験でした。ペット業界に進んだ仲間などはフードの研究などをしていたり、新しい分野でしたけど、今でも大学では続けて研究しているようです。
ミニブタはペットと同時に実験用動物としても開発されてきた歴史があります。1960年代にゲッチンゲン大学で開発された「ゲッチンゲン」などは代表的な種類です。ヒトと同じ雑食性動物であるため、消化器など豚の臓器や配置、目の構造などとか人間に似ているので、人間用に使う医療器具や薬の最終段階としての実験に、ミニサイズの豚がとても扱いやすいわけです。また代替臓器提供ドナー動物としても注目されています。 |
ペットとして気をつけたいことは? |
汗をかかないので、体臭も少なく、キャラクターで”ザシキブタ”というのがありましたが、もちろん室内でも飼えます。ただ親が小さければそんなに大きくならないけれど、ゆうゆう50kgくらいになりますから、スペースは必要です。
鼻はすごく器用だし、強いので、かまってくれないとソファーくらいの家具なら鼻で持ち上げたりします。「かまえ!かまえ!」っていう合図なんですよ。また犬にも負けないくらい鼻が利きます。フランスで豚が高級キノコのトリュフ探しに使われることは有名です。鼻は結構急所になっていますから、叱るときは鼻を痛いくらいつかむと観念します。ただ人間のように「○○ちゃん、ダメ!」という叱り方はやめた方がいいです。頭が良いですから、名前を呼ぶたびに叱られていると勘違いされますよ。耳もいいです。居眠りしていても遊んでくれそうな気配がするとすぐに寄ってきます。だけど視力が弱い(0.1以下)ので、階段の上り下りはゆっくりしたペースに合わせます。足と体のバランスが悪いので、すべりやすいフローリングなどは要注意ですね。ブタはハイヒールをはいているような爪であるきますから。
ちょっとした旅行なら、最近ではペット泊まれる宿も増えましたから、ミニブタOKのところもあります。不思議に思うかもしれませんが、養豚場へは連れて行かないでください。同じブタなんですけど、飼育され方が全く違いますから、ペットはペットの世界で交流するように。ちょっとした菌でも病気によっては動物感染しやすいこともあるので養豚場には近づけないようにしなければ、養豚場の豚が全滅という事態にもなりかねません。
ペット同士なら年1回のワクチンさえしていれば大きな問題はありません。 |
サイボクさんの「トントンハウス」を拝見したんですが、3匹の子豚が常に一緒に行動していたのが面白いですね。 |
もともと集団生活する動物ですから、ひとりぼっちは嫌いのようです。穏やかな性格ですから他のペットと一緒にも生活できます。できるだけ遊んであげる時間が必要です。もっともミニブタの方が動きがかわいらしいですから、かまいたくなるようにできていますけどね。小さいだけあって神経質ですが人懐っこく、” 人好き”ってかんじですから、わらわら寄ってきます。ミニブタと触れ合える動物園も増えてきましたから、飼っていなくても楽しめると思います。ただ顔の辺りを急に触られると驚きますから、体の方からゆっくり触るようにすれば咬むこともありません。 |

「トントンハウス」の養豚用子豚 |

「トントンハウス」白ちゃん |

「トントンハウス」黒ちゃん |
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ミニブタといっても家畜ですから、餌は簡単に用意できますよね。 |
基本的には雑食ですが穀物中心に何でも食べます。家庭のくず野菜などの片付けにとても役立ちます。ただ養豚飼育用の餌は与えない方がいいですよ。養豚とは目的が違いますから、どんどん太ってしまいます。実験用ミニブタフードなら簡単に手に入ります。 |
しつけは? |
とてもきれい好きですから、寝床とトイレはすぐ覚えてくれます。トイレは犬用のシートで十分間に合います。唐辛子など刺激の強いものは苦手なので、触ってはいけない場所にはトウガラシの入ったしつけスプレーなどを塗っておくのもいいでしょうね。 |
特に気をつけたいことは? |
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豚は太っているというイメージがありますが、ミニブタは栄養制限しているため、皮下脂肪が少ないうえ、毛が少ないですからほとんど裸。さむがりです。風邪をひきやすいですから寒いときはヒーターも必要ですし、洋服を着せてあげるのもいいです。体温調節が苦手なので、夏は水あびさせてもいいですね。 |
豚というと食用と考えるのが普通だと思いますが、豚肉は好きですか? |
サイボク敷地内に設けられた
「蓄魂碑」
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お肉のために飼われてた豚はちゃんと食べてあげたいので、それはそれというように思います。人間が豚に生かされていることに感謝する気持ちが強くなります。 |
ペットセラピーが注目されていますが? |
長野県の小学校などのように体験学習としてミニブタを飼っているところもあちこちにあります。ミニブタは仲間意識が強いですから、動物から学ぶことも多いですよね。 |
今後はどのようなことを考えておられますか。 |
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日本のライフスタイルに合わせて、成豚で10kgくらいの超小型豚の研究もされているようです。日本でのミニブタの飼育がもっと楽しくなるように、ミニブタのオーナーさんの声をまとめたいと思います。 |